米の貯蔵中の品質について
1、米の一般的な品質劣化について
品質劣化要素 | 主な現象と結果 |
カ ビ | 商品価値の低下。(最悪時には商品全滅) カビの種類の中には、発ガン性部質(アフラトキン)を生産するある為注意が必要。 |
貯蔵害虫 | 商品品質の低下。(最悪時には商品全滅) |
古 米 臭 | 貯蔵中に異臭(古米臭)発生。賞品価値の消失。 古米臭は炊飯後にも残る。 |
乾 燥 | 乾燥により、給水時のヒビ割れが生じる。 炊飯後の食味低下。 |
成分変化 | 籾(モミ)と玄米の呼吸により、米の主成分である澱粉の分解、グルタミン酸・ビタミンB1の現象が発生。その結果食味の低下が発生。 |
米の貯蔵における品質劣化には、温湿度が多大であるといえます。
高品質で長期貯蔵を考える場合、「温度管理」「湿度管理」を以下に行うかが
重要なキーポイントとないます。
米(玄米)を常温で貯蔵した場合次のような品質の劣化が考えられる。
米の含水率が高いとカビ、米虫が発生する。長期に保存すると古米臭でる。
2、貯蔵中の品質に与える要因
(1)含水率の影響
米の水分が高いと呼吸量が増加し、品質の劣化が発生します。
更に高含水率はカビの発生が起き易く、貯蔵害虫の発生も考えられます。
玄米の含水率は15%前後が食味、貯蔵に最適とされている。
14%では食味の低下が生ずる。
13%では炊飯の吸水時にひび割れが出る。
15%は食するに最適な状態。
15%以上は上記の品質劣化や問題が起きる。
(2)貯蔵温度の影響
貯蔵温度が高いと呼吸量が大幅に増加し、品質が急激に劣化する。
常温貯蔵で夏を越した米が急激に劣化するのはこのためである。
穀温が20℃を超える7.8.9月に呼吸量が桁違いに多くなる。
(3)米虫の発生条件
米虫の生活適温から夏季に発生が多い
主要米虫の発生と生態
米虫 | 年間発 生回数 |
生活適温 (℃) |
産卵方法 | 加害 様式 |
伝播様式 | 越冬 状態 |
特性 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
コクゾウムシ | 3~4 | 2.8% | 米粒に穿孔 | 潜伏性 | 上昇横行 | 主に成虫 | 暗所を好む |
ココクゾウムシ | 3~10 | 31 | 米粒に穿孔 | 潜伏性 | 上昇横行 | 幼虫 | 水湿を好む |
ナガシンクイムシ | 2~3 | 34 | 米粒の間隙 | 破壊性 | 外部より内部 | 成虫 | 籾のも加害 |
ノシメマダラメイガ | 3~4 | 28~29 | 米粒の間隙 | 剥皮性 | 飛翔下降 | 幼虫 | 糞は帯赤色 |
イッテンコクガ | 1~2 | 28~29 | 米粒の間隙 | 剥皮性 | 飛翔下降 | 幼虫 | まゆを造る |
注:米虫の名前をクリックすると農研機構の貯穀害虫・天敵図鑑に飛びます
(4)最適貯蔵温度について
食糧庁は玄米の低温貯蔵温度を15℃に定めている。
15℃は貯蔵中の品質劣化が少なく、経済性を勘案した温度といえる。5~10℃で貯蔵することは米の品質保持上はよいが設備費とランニングコスト面から15℃は米虫の発生を抑え、カビの繁殖しづらい温度で、米の呼吸も低下し、設備費とランニングコスト面から適温とされている。しかし、長期的な品質保持を第一に考えるならば5℃が理想である。
(5)米の平衡含水率について
米をある湿度に貯蔵した場合、水分蒸発や吸湿が起こらない含水率がある。このときの米の含水率を平衡含水率という。
湿度が73%~74%の時、貯蔵中の水分蒸発及び吸湿のない玄米の平衡含水率は15%である。
3、貯蔵形態が品質に与える影響
(1)籾(モミ)貯蔵
籾貯蔵は、米の常温貯蔵での品質保持に有効(カビや害虫に対して)である。
しかし、穀温のコントロールが難しく、通常は5月頃までの貯蔵にとどめ、それまでに籾摺りを終わらせる場合が多い。
籾を玄米にするために、籾摺り機で籾摺りをしますが、このとき籾摺りロールにより玄米表面に傷がつき、この傷にカビ類が着生しやすい。このため、常温貯蔵では、籾貯蔵が有効である。常温倉庫で年間保管したときの籾・玄米の品質比較
(食料研究所「米の品質と貯蔵・利用)いずれも俵装貯蔵)
主な測定項目 | 玄米貯蔵 | 籾貯蔵 |
---|---|---|
玄 米 の 光 沢 | ○ | |
玄 米 の 剛 度 | △ | |
容 積 重 | ○○ | |
搗 減 歩 合 | ○ △△ | ○ |
虫 カビ 害 歩 合 | △ | ◎◎◎ |
化 学 成 分 | △△△ | |
ビ タ ミ ン B1 | ○○ △△ | |
酵素(カタラーゼ活性度) | △△ | □ |
脂 肪 酸 度 | △ | |
食 味 | △△△△ | |
総 合 的 評 価 | □□□□ |
以下○:良、□:やや良、△:両者の差異がない
(2)低温による玄米貯蔵
玄米の低温貯蔵は、貯蔵上のキーポイントである米の水分、温度コントロールが的確で、品質変化を防ぐ上から判断して、常温の籾貯蔵より優れている。又、籾より容積が30%少ないという利点がある。
(3)精米貯蔵
精米を、常温、低温、(15℃)、冷蔵(5℃)の各温度帯に貯蔵した場合、冷蔵貯蔵の変化が最も少ない。普通精米と除糠研米(無洗米)では、除糠精米が品質変化は少ない。これは、研米によって、糠を十分除去したためと考えられている。
(4)除糠精米(研米精白)
普通精米は、精米表面に粉状の糠が付着している。この糠を取り除いたものが除糠精米である。このため、普通精米より貯蔵性が良い。除糠精米は、クリーンライス又は無洗米とも言う
4、古米臭及び古米化
(1)古米臭の主たる原因
→→
→上記チャート図に示すように、米に含まれる不飽和脂肪酸は、リポキシゲナーゼ(酵素)の作用を受けて脂肪酸化物を生成し、これが更に代謝されて、ヘキサナールなどの揮発性カルボニル化合物を生成する。これが古米臭の正体である。
(2)古米化の主たる原因
→→→
→
上記チャート図に示すように、米の貯蔵温度が高温の場合、ホスホリパーゼD(酵素)が活性化され、リン脂質に作用し、内部から中性脂肪が漏出する。これらは、リパーゼ(酵素)作用を受けて遊離脂肪酸が増加する。これらに一部が胚乳中に浸透して澱粉ミセルに結合し、炊飯時の澱粉粒を硬化する。その結果、炊飯米が堅くなり食味が低下する。
(3)古米臭及び古米化の対策法
古米臭及び古米化の主たる原因には、脂質の分解、酸化、代謝、酵素などが関与しているため、貯蔵は低温に保つことが重要である。
5、米の貯蔵法のまとめ
(1)食糧庁推奨の玄米の低温貯蔵基準について
q 玄米の含水率15%の時、貯蔵温度15℃、庫内の相対湿度60%である。
w 含水率15%は、貯蔵中の食味の低下及び品質劣化を防ぐ点から最適とされる。
e 温度15℃は、貯蔵中の品質劣化をある程度抑制し、ランニングコストをさほど掛けないようにして決められたものである。
r 相対湿度60%は、貯蔵中のカビの発生を懸念して決められたものである。しかし、この湿度では玄米は貯蔵中に乾燥するという問題点がある。
(2)籾の低温貯蔵について
q 貯蔵中の品質を考えるなら、籾の低温貯蔵が最も良いと推奨する研究者もいる。しかし、問題点が2つある。
w 1点目は、玄米に比べ約30%の容積がかさむこと、2点目は、玄米の状態を直接観察できないことが挙げられる。このため、あまり実施されていない。
e 1点目の容積の問題は、現在の倉庫事情から問題ない、との考えが多い。
r 問題は、2点目の玄米の状態を直接観察できないことである。これは、買い入れ側と売り渡し側との間の相互信頼が十分でないことが根底にあると推測される。
(3)玄米の低温貯蔵について
q 貯蔵中の品質を第一に考えるなら5℃が望ましい。
w 玄米の含水率が15%のとき、貯蔵中の相対湿度を73~74%に保てば、水分蒸発及び吸湿の心配は、ほぼないと言える。
e 貯蔵形態は、運搬の事を考慮し30kgの袋とし、通気性のあるものが望ましい。
r 夏場など貯蔵庫から外に出した時、結露の問題が生じる。結露の心配がある場合は、外気温から5℃低い温度まで米を温められる機能、即ち、前室を持った貯蔵庫が理想である。
(4)精米の低温貯蔵について
q 精米には、普通精米と除糠精米があるが、貯蔵性は除糠精米が良い。これは、精米表面の糠を除去してあるため脂質酸化などの品質劣化が起こりにくいためである。
w 貯蔵温度は、低温の方が良い。